江戸復刻酒「國光正宗」

このコロナ禍で、飲食店、特にお酒を提供しているお店は本当に大変な状況であると、ニュースだけではなく、身近なところからも聞こえてきます。感染防止を考えると、そのようなお店に足が遠のくのは、理解できる行動でしょう。私自身も、コロナ禍になってから、外で飲むことはなくなりました。それでも、やはり知り合いのお店を、少しでも応援したく、テイクアウトすることはあります。しかし、お酒をテイクアウトすることはないので、応援も微々たるものだと思っています。一日も早く、感染を気にせずに、お店でお酒を楽しめる日が来ることを願っています。

お酒を扱っているお店が大変ということは、お酒を収めている酒屋さん・メーカーさんも厳しい状況であると想像できます。それでも、そんな状況にも負けず、色々な事にチャレンジし、頑張っているようです。

岩手県の北東部に位置する洋野町(ひろのちょう)は、三陸沖で取れる海産物、高原を利用した酪農、また木工品などが特産です。その洋野町に在る旧家の西大野商店(酒の小売りや燃料販売)には180年近く使われてきた大きな蔵があります。近所に住む商店が実家の布施かおりさんが、蔵の保存のあり方や、古来の酒造りの復活を模索していたところ、江戸時代の南部杜氏の指南書ともいえる醸造法を記した資料が見つかり、二戸市の酒造会社・株式会社南部美人(先月お伝えしたフィナンシェにも使用されているお酒の会社です)に協力を求め、昨年1月に「南部藩・復刻酒プロジェクト」を立ち上げました。酒米には生産量の少ない貴重な自然栽培のお米「亀の尾」を使用し、4月上旬に南部美人の蔵で、できるだけ当時の物に近づけたいと木桶を使って仕込みました。そのお酒が6月に販売となり、数量限定でもあったため、2時間半で完売となったようです(残念…来年はぜひ!)。商品名は、当時作られていたものと同じ「國光正宗(こっこうまさむね)」です。仕込み当初は、米・水・こうじの割合も現在と違い、もっと雑で、個性的な味になるのでは?と思っていたようですが、思いのほかバランスの良いお酒になったようです。来年以降は、江戸時代に飲まれていたお酒により近づけるため、原料等にこだわり、当時に使われていた玄米や、お酒を造っていた井戸水も復活させていくプロジェクトも組まれているようです。先人の知恵や苦労が現代によみがえることに、ロマンを感じてしまいますね。

私もお酒は好きですが、「百薬の長」になる飲み方で(適量、おつまみも食し、適量の水も飲みながら、休肝日も設ける等)、食生活を楽しく豊かなものにしていきたいと思っています。決して他人に無理強いして飲ませることの無いよう、万病の元にならないように…楽しく、楽しく…。