琥珀とジェット

岩手県の久慈市と言えば、2013年の朝のテレビ小説「あまちゃん」の舞台になったことで有名になりました。驚いた時や感動した時の久慈市小袖地区の方言「じぇじぇじぇ」(同じ岩手でも、花巻では使いません)は流行語にもなりました。テレビでは「北限の海女」が有名になりましたが、久慈は国内最大の琥珀(こはく、英名:アンバー)の産地でもあります。

琥珀とは、数千万年~数億年前、地上に繁茂していた樹木の樹脂が土砂などに埋もれ化石化したもので、いわば「樹脂の化石」。久慈の琥珀は、約9000万年前のもので、南洋スギ(学名アラウカリア)が起源樹種と考えられており、商業価値として用いられる最も古いものなのです。宝石と言えば、真珠、珊瑚、べっ甲など、一部が動物に属するほかはほとんどが鉱物で、琥珀のように植物に属するのは極めて珍しく、生成の過程で古代の昆虫、葉、花等自然に入り込んだものも有り、これらは大変希少性を持ち、学術的にも価値があります。(久慈琥珀ホームページより引用)。この琥珀を採掘する際に一緒に原石が見つかっていたのが宝石「ジェット(和名:黒玉・こくぎょく)」で、流木が海底で紫外線や空気に触れずに化石化したものです。2014年に調査でジェットと判明しましたが、それまでは「燃えない炭」と呼んで廃棄していたそうです。久慈琥珀(株)は、商品開発に着手しましたが、採掘時に原石に亀裂が入りアクセサリーに加工できるものが少なかったため、岩手大学と共同研究し加工技術を開発、琥珀とジェットを組み合わせた新ブランド「アンジェローグ」を立ち上げ、先月9月1日から宝飾品を販売しています。

ジェットは、英国のビクトリア女王が夫を亡くした際に愛用し奨励したことから、モーニングジュエリーとしての地位を確立、日本の皇室でも服喪宝飾として使われています。英国産が有名ですが、英国の採掘場は閉山し、粗悪な海外産も有り、高品質の久慈産ジェットの需要は高いと見込んでいるようです。また、琥珀採掘場の周辺では、今年の夏に恐竜の化石も多く見つかっていることが報告され、久慈市には、まだまだはるか太古のロマンが眠っているようです。コロナ禍で暗い話題が多い中、久慈市にとっても岩手にとっても、どちらも希望の持てる話題です。

あまり宝石に興味のない私も、歴史好きの亡き父が久慈で買ってきてくれた琥珀のペンダントは、大事にしております。どの宝石も、光の入り方で輝き方は違うと思いますが、琥珀に自然光を通してみるとキラキラ光り、色も変わって見えきれいですよ。機会がありましたら、琥珀とジェットをご覧になってみてはいかがですか。久慈には、「久慈琥珀博物館」もありますので、コロナが落ち着いた時、ぜひ訪れてください。