南部鉄器

新型コロナウイルス感染対策で、マスクの着用もあり、いつも以上に暑さを感じてしまう今年の夏。そのような中で、岩手県奥州市のJR水沢駅には南部鉄器の風鈴が飾られ、「チリーン、チリーン」という高く澄んだ響きのある音色のハーモニーが、乗客たちに涼を送っています(東北新幹線水沢江刺駅にも飾られています)。 

南部鉄器で有名な鋳物の町の夏の風物詩として、昭和38年から毎年6~8月に飾られ、水沢駅は、「風鈴駅」とも呼ばれるようになりました。今年は、新型コロナウイルス感染予防の影響で、人員を減らしての作業の為、例年より少ない約700個ではありますが、環境省の「残したい“日本の音風景100選”」に選ばれた音は変わりなく、本当に癒されます。

南部鉄器の産地は主に盛岡市と奥州市です。盛岡の鉄器は17世紀初め南部藩主が京都から釜師を招いて茶の湯釜を作らせたのが始まりとされ、奥州の鉄器は、平安時代末期、藤原清衡が近江国から鉄器職人を招き、武具などを作らせたのが始まりとされています。銑鉄(せんてつ:高炉や電気炉などで鉄鉱石を還元して取り出した鉄)を主原料として造られ、仕上げに漆を塗ることでさび止めにもなり、鉄の素材を柔らかに生かすデザインは、素朴で深みのある味わいがあります(岩手県のホームページより引用)。

私が幼い頃、夏には南部鉄器の風鈴が飾られ、寒くなると祖父の部屋の大きな火鉢には、いつも鉄瓶でお湯がシュンシュンと沸いており、床の間には、南部鉄器の銅鐸のような飾りものが置かれ、家の中の光景に馴染んでおりました。祖父は、この鉄瓶のお湯がおいしい(やわらかい)と言って、好んで飲んでいました。また、学生の頃、貧血になった私の為に、母が鉄鍋を買ってきて、味噌汁から煮物まで、それで作ってくれました。それだけで貧血が治ったのではないとは思いますが、一助となったのではないかと思っています。私も、娘の為に、そうしようかと持ったのですが、鉄玉子(これも南部鉄器。玉子型に成形したもので、鍋やヤカンに入れてお湯を沸かすことで鉄分がお湯に溶出し、鉄分を補給できる。今は、キャラクターなどいろいろな形もある)で代用してしまいました(苦笑)。

現在は、南部鉄器も機能のほかに、デザイン性にも優れ、カラーリングされた急須や鉄瓶などは海外でも人気となっているようです。歴史的には、戦争の時代を含め、大変な時期も多くありましたが、岩手が誇るべき名品として、応援していきたいと思います。

おしゃれなキャンドルスタンド等インテリアにもなるような素敵なものも多く、実用的にも良いものですので、まずは、興味を持っていただくと、嬉しいですね。