遠野ジンギスカン
先月書かせていただいた「釜石線」の沿線で、花巻市の隣にある遠野市は、民俗学者・柳田国男著書、伝承などを記した説話集「遠野物語」で知られる「民話の里」です。カッパが住んでいると言われる「カッパ淵」など、そこかしこに民話の世界が溢れ、民話を伝承する語り部(かたりべ)がいます。今回は、その遠野市の名物・ジンギスカンをご紹介いたしましょう。
ジンギスカンと言えば、北海道のイメージが強く、他に長野県なども有名ですが、遠野は、市という狭い範囲なのに、「焼肉と言えばジンギスカン」というほど。しかも、一人当たりの羊肉の消費量が、北海道民の消費量に匹敵し、半世紀以上「ジンギスカン」が一般的に愛されているところです。全国的にジンギスカンが有名な土地でのルーツは、明治維新に伴う洋装化で、軍や警察などの制服などでもウールの需要が急増したため、政府が生産を呼びかけ、羊毛生産地となったところに、羊肉の食文化が定着したという所が多いようです。しかし、遠野市は、戦時中、中国東北部(旧満州)で羊肉を食べる習慣に触れ、そこでおいしい羊肉料理に出会った人が、戦後故郷に帰り、羊肉のおいしさを伝えようと自分の店で出し始めたのがルーツで、1930年頃から「ジンギスカン」という形で食べられていたようです。試行錯誤して作られた羊肉に合うタレが評判を呼び、「ジンギスカン」が一般的に愛されるようになりました。
遠野のジンギスカンで特徴的なのは、野外でのバケツジンギスカンです。「ジンギスカンバケツ」と言われる側面に空気を循環させるための穴が開いたブリキのバケツの中に、固形燃料を入れ、その上に南部鉄器のジンギスカン鍋を載せて材料を焼くスタイルです。先ほどのお店の2代目が考案しました。このバケツの登場により、祭りなどのイベントやアウトドアでのレジャーなど、手軽にジンギスカンが楽しまれるようになり、このスタイルが定着いたしました。私もン十年前にこのスタイルでごちそうになった時、「ジンギスカンが、こんなに手軽に食べられるのか、いつものバーベキューより準備も簡単!」と感動したものです。今でこそ、花巻のホームセンターでもバケツを見かけることもありますが、そのころは、遠野のお店にあるのみでした。我が家でも、最近購入しようと思い、近くのホームセンターに行くと時期が過ぎてしまったのか、どこにも見当たりません。その後、遠野に行くことがあり、念のためホームセンターをのぞいてみると、店員さんに場所を聞くまでもなく、うずたかく積み上げられているジンギスカンバケツを見て、思わず「さすが!」と声に出してしまいました(笑)。
機会がございました時は、ぜひ遠野スタイルで、ジンギスカンを食してみてくださいね。