
『うのすまい・トモス』
先月より開催されているラグビーワールドカップは、各国の選手たちのすばらしいプレーに、見ている私たちも熱くなりますね。日本のおもてなしも話題にのぼり、来年のオリンピックに向けてもとても意義のある開催になっていると思います。
今回、被災地開催として釜石鵜住居復興スタジアムがありました。スタジアムはもちろん、建物のほとんどが、新しく建てられていることに、訪れた方は驚かれたかもしれませんが、それだけ津波は全ての建物を壊してしまったということも知っていただきたいと思います。
三陸リアス線鵜住居駅のすぐ目の前に、複数の公共施設を一体的に配置した「うのすまい・トモス」が、今年の春にオープンしました。ここは、「東日本大震災の記憶や教訓を将来に伝えるとともに、生きることの大切さやすばらしさを感じられ、憩い親しめる場」として地域活動や観光交流を促進するエリアとして建設されました。「トモス」の名前は、復興の明かりを「灯す」「共に」「友」を意味する言葉と、鉄のまち釜石の炉のイメージを表現しているそうです。(ホームページより引用)
エリア内には、震災伝承と防災学習のための施設「いのちをつなぐ未来館」、東日本大震災犠牲者慰霊追悼施設「釜石祈りのパーク」、観光交流拠点施設「鵜の郷交流館」があります。
「鵜の郷交流館」は、お食事処・お土産品・産直など、釜石の名物を味わうことができます。「いのちをつなぐ未来館」は、震災の出来事や教訓、防災学習の取り組みを紹介する「展示室」、震災に関する書籍や資料などを閲覧できる図書スペース「資料閲覧室」、企画展、ワークショップ、語り部、地域交流など様々な活動に対応する多目的スペース「防災学習室」があり、震災を風化させてはいけないという地域の方々の熱意が感じられます。「釜石祈りのパーク」は、多くの犠牲者をだした防災センター跡地であることを記す碑と、震災で犠牲になられた方々の芳名板と献花台を備える慰霊碑、それから釜石市防災市民憲章を刻んだ碑が建てられております。防災市民憲章の中には「備える…災害はときと場合を選ばない、避難訓練が命を守る。逃げる…何度でもひとりでも、安全な場所にいちはやく、その勇気はほかの命も救う。戻らない…一度逃げたら戻らない、戻らせない、その決断が命をつなぐ。語り継ぐ…子どもたちに、自然と共に在るすべての人に、災害から学んだ生き抜く知恵を語り継ぐ」という文言があります。
日本のみならず、世界のどこであっても、災害が起こる可能性のある現代です。過去から学び、安全に生きるためにどうしたらよいかを考え、一人一人が、まずは自分の身を守る術を身に着けていくことが、犠牲になった方々への供養にもなるのではないかと思います。少しでも多くの方が訪れ、感じて考えて、それから行動に移せる何かを、掴んで頂けたらと願っています。
来年の東京オリンピック・パラリンピックは、「復興五輪」を理念に掲げています。海外のメディアもワールドカップを含め復興の状況も発信してくれることでしょう。復興の状況を伝えるとともに、防災に対する意識、支援する心も一人一人の中に、特に未来を担う子供たちの心に育っていってほしいと願います。災害は、対岸の火事ではないと自身にも言い聞かせつつ…。